番外編 −後悔の拾い物 後編−
「まさかクロス航海長が難破してたなんてなぁ〜、ホントすげぇ拾いモンしたさ!!」 「俺だって驚いたさ。まさかアイツがお前らに船譲っていたとはな‥・・・・しかも、船長と航海長ときた」 頭の後ろで両手を組むラビは椅子をガタガタと揺らしながら楽しそうに笑い、クロスと呼ばれた男も口の端を緩く 吊り上げる。 揶揄するような口調に眉を顰めて神田がフイと視線を逸らせば、未だに沈黙したままの少年が一人。 顔色はずいぶん良くなったようだが、まだ真正面に座る男を見る気にはなれないらしい。 両手を膝の上で拳にして握り締めている手はどれ程の力が加わっているのか、食い込んだ爪の部分が微かに白くな っていた。 神田見かねて手を伸ばし、アレンの小さく白い手に自分の手を重ねる。 ハッとして顔を上げたアレンは神田を見て、少しだけ安心したような表情を見せた。 「で、アンタいつからあそこで難破してたんだ?」 「さァな。太陽が何度か昇ったのは憶えてるんだが・・‥・・」 「難破くらいで死ぬわけないですよ・・・殺しても死なないんだから・・・・‥」 ボソリと聞こえた声は、隣にいた神田ですら殆ど聞き取れないくらい小さな呟きだった。 が、アレンの師であるクロス・マリアン元航海長には完全に聞き取れたらしい。 「ほ〜ぉ・・・・‥いつの間に俺に口答え出来るようになったんだ、あぁ?馬鹿弟子」 「っ、ちょっと!蹴らないで下さいよ!!」 机の下でガタガタと音がするのを呆れた表情で聞き流しながら、神田はふと目の合ったラビが何か言いたげだった ので軽く身を乗り出す。飽きずに騒ぐ二人に聞き取れるかどうかの音量で口を開いた。 「俺たちが先代からこの船を譲り受ける切っ掛けになったのって、『俺は旅に出る』とかいうクロス航海長の書き 置きだろ?」 「そう言ってたな。あの人も『航海長が居ない船は風を失くした帆も同然だ』つって・・・・‥」 ――元々、【黒耀】は神田とラビが慕っていた海賊たちの船だった。 不定期的に英国のプリマスに訪れる大きな船に子供心に憧れを抱き、町学校のクラスメイトだった二人は暇さえあ れば――時には学校をサボってでも――遠目から船を眺めに行っていた。 そんな時、二人の存在に以前から気付いていた当時の航海長、クロス・マリアンに声を掛けられたのだ。 『乗せてやらん事もない、その代わり酒を寄越せ』という言葉に2人は迷ったが、話し合った末に大きく頷き、ジャ ンケンで負けたラビは家の倉庫にあった酒を――それが入手困難な高級ワインだとも知らずに――惜しげもなくクロ スに渡した。 約束通り・・・・‥しかも思いがけず一流の酒を頂戴したクロスは上機嫌で二人を通り船に乗せた。 当時、神田とラビは14歳。水夫になるにはまだ幼く、本当にただ『乗せて』もらえただけだったが、それでも2人 の心は高鳴った。 船の上から見える港の景色、振り返れば視界いっぱいに広がる青の大海原。 いつかこの海を旅出来たらどんなに素晴らしいか、2人は初めて船に乗ったこの時、互いに船長と航海長になろうと 瞳を輝かせて頷いたのだった。 そして『あの人』と出会ったのも、舳先に座って色を変える空と海を飽きず眺めていた時。 笑い合う少年たちをマストから見下ろしていた彼はまるで鳥のように神田とラビの前に降り立ち、微笑んで言った。 『16歳になったら、正式にこの船で水夫として雇おう』 突然現れた船長の言葉に2人は目を剥いたが、願ってもない申し出に嬉々として歓んだ。 それからは水夫の真似事をして、マストを登る代わりに高い樹へ登ったり、何時間も走ったり、海で泳いだり・・‥・・ そして黒耀が港へ来ると、一目散に駆け出す。そんな毎日を心から楽しんでいた。 二年後、ラビが神田より少し遅れて16歳になり、約束通り黒耀の一員として迎えられ、それから1年は目まぐるし く下働きや水夫としての労働をこなす日々。だが、嫌気がさす事は不思議と無かった。 器量のある船長に、傍若無人だが確かな人材の航海長。その2人を純粋に慕っている水夫たち。 神田はラビと違って社交性に長けてはいなかったが、それでも黒耀の水夫とは割と上手くいっていた。 そんなある日―――2人が水夫になって1年半ほど経った頃―――の朝。 あの置き手紙が船長の部屋の扉の前に貼られていたのだった。 「船貰えたのは嬉しかったけどさぁ〜、なんつーか・・・・‥」 「いつまで経っても変わらねぇな。この人のこういう自由気儘なとこは」 互いの記憶を語り、再び椅子に深く腰掛けて同時に溜息を吐く。 横を見れば、未だに喚いているアレンを軽くあしらうクロスの顔が活き活きしているのを見て、神田は眉間に皺を 寄せた。 そういえば、かつての自分もこんな風に遊ばれていたな‥‥‥と甦る嫌な記憶にこめかみを押さえる。 「それで、アンタこの先どうするんだ?明日には船も近くの港に着く予定だが・・‥‥」 「何だ、もう船長気取りか」 「船長なんだよ実際!!!!」 「あはははは!変わんねーな、こういう遣り取り」 声を上げて笑ったラビはカタンッと椅子をひいて立ち上がり、外へと続く扉を開ける。 途端、吹き込んだ気持ちの良い潮風に眼帯をしていない方の目を細め、口端を吊り上げた。 「とりあえず、クロス航海長の寝床開けてくるさ〜。あと夕飯も」 「おい、フランスワインあるんだろうな?」 「・・・・‥アレンの言う通り、沈めるべきだったさ・・・・・・」 上品質のフランスワインがこの船から数本消える事は容易く予想出来て、ラビは自分の失態を声に出して嘆く。 肩を落として去っていくラビの後ろ姿をクロスは酒も入っていない内からケラケラと笑い、そのあまりの変わり の無さに、弟子であるアレンも盛大に肩を落としたのだった。 「おい、神田船長殿」 「気色悪ィ言い方すんなよ。クロス元航海長殿」 元、を強調する辺りは先程の仕返しだろうか? けれど棘のある言葉の割にはどちらも楽しそうで、アレンはその場に居ながら無関係の第三者として見ている ような気分になる。 確かに自分と神田は出会ってまだ二月程度だし、師匠と嫌々過ごしたのだってたったの三月。 数年単位を船の上で共にした彼らと自分では、何と無く疎外感を感じてしまうのも無理は無かった。 「まだ夕食には時間があるだろ。コイツ貸せ」 自分勝手な寂しさに浸っていると、突然襟を掴まれて席を立たされる。 嫌な予感がしたアレンは大声で抗議したが、クロスはそんな事をお構い無しに神田を見遣った。 「ッ、はぁ!?冗談じゃ無いですよ!!まさか海の上まで来て僕に荒稼ぎさせようってッ、んー!むーっ!!」 「文句は無ェな?久しぶりの師弟の再会に水を差すような男に育てた憶えは無い」 「俺を船長に育てたのはアンタじゃねぇけどな‥・・・・」 大きな手に口を塞がれてジタバタと抵抗するアレンを横目に、神田はいくつかの事を想定して考え込む。 この雰囲気から見てアレンとクロスの間に特殊―――ある意味とても特殊だが―――な関係があるとは思えな いし、これからそんな関係が築かれる雰囲気も無い。アレンには申し訳ないと思ったが、このまま船内を彷徨 かれても迷惑なだけだ。 「・・・・・・夕食までだ」 「神田の馬鹿―!!人でなしー!!!!」 「後、暇な水夫何人か貸せ」 もう好きにしろと手を上げる神田を満足げに見遣ると、クロスはアレンを荷物のように肩に担いで部屋を出て いく。 扉を開けて、数歩歩き、ふと‥‥‥無駄にゆっくりとこの船の現船長を振り返った。 「おい、水夫にそれなりの金は持たせてあるんだろうな?」 はぁ?と少しだけ間の抜けた声を出した神田を余所に、アレンは両手で顔を覆った。 「フルハウス・・・・‥です」 「またかよ!!」 「アレンー、少しは手加減してやれば?」 「手加減なんかしたら僕が師匠から殺されます」 夕食と賭博がごちゃごちゃになった食堂で、アレンは周りから非難の声を浴びながらカードを切る。 普段、船の上ではあまりテーブルに並ばない酒類も、この度の夕食は元航海長のクロスが乗っているという ことで盛大に振舞われていた。 当のクロスは先ほどから姿が見えないのだが、アレンは一応―――カモにされているわけではないので――― 限度を守りつつ水夫達から金を巻き上げていく。 中にはアレンの腕がかなりものであると気付き、傍観している水夫も少なくは無かった。 「そーいやアレン、カードなんて何処で手に入れたんさ?」 「あぁ・・・・‥ジャンのお店で、ラビ達が来る前にゲームしていたんです。その中の一人がお金を持っていない から、代わりにこれをって・‥・・・」 「ふぅん・・・・‥」 ポーカーにチャンスカードは無用、と抜かれたジョーカーに手を伸ばし、ラビはピラピラとそれを振ってみせる。 ジョーカーの名に相応しく、カードには口から砲塔を突き出した兎の奇妙な絵が描かれていた。 「ねぇ、師匠は何処に行ったんですか?神田の姿も見えないし・・・・‥」 僕に勝負させておきながら自分は消えちゃうなんて。 むすっとした表情で睨め上げてくるアレンの頭を撫でるように叩き、ラビは「そのうち戻って来るさ」と部屋の 扉を見遣る。 水夫の輪の中心にいながらいつの間にか気配を消して席を立ったクロスの手には、まだコルクを抜いていなかっ たワインとグラスが二つ握られていた。 本当に久し振りの再会にはラビも積もる話があったのだが、部屋を出ていくクロスから「そいつを見張ってろ」 と視線だけで仰せ付かったので、ラビは先程からアレンの傍を離れていない。 新しい船長との会話に水を差されたくないのも理由の一つだが、きっと酒に酔った水夫が暴徒化してアレンに 危害を加えないとも限らないので、その為の『見張り』だろう。 神田とラビが船を譲り受ける際に何人か質の悪い水夫も船を下りたし、今残っている水夫はアレンを可愛がって いるので問題ないと思うのだが、それも弟子を想う師匠心と言うものか。 大の大人達から金を巻き上げる少年の姿は逞しいにも程があったが、自分が被害に遭わなければそれで良いか、 と現航海長殿は高みの見物を決め込むことにした。 酒の臭いで噎せ返るキャビンから逃げるように退散した神田は、夜の潮風に闇色の髪を靡かせていた。 未だにキャビンから聞こえてくる笑い声は実に楽しそうで、普段は厳しい面を見せる神田だが、「偶にはこんな 娯楽も良いか」と酒の力も手伝って寛大になる。 船を叩く波の音やマストを揺らす風の音は、少し酔いの回っていた身体を覚醒させるのに心地良く耳に響いた。 「船長殿」 名称で呼ばれ、神田は溜息を一つ零して振り返る。 ワインボトルとグラスを二つ手に持って現れたクロスは一つを神田に放り投げ、メインマストの傍に腰を下ろした。 無言のまま酒を呷るクロスをしばらく見詰めた後、細い息を吐いて神田も傍に座る。 すでに一杯目を飲み干そうとしていたクロスのグラスにボトルからワインを継ぎ足すと、クロスは咽喉の奥でクツ クツと低く笑って神田のグラスにも酒を注いでやった。 たった数年前までは「航海長」と「水夫見習い」という関係だった自分たちが肩を並べて酒を酌み交わすなど、一 体あの頃の誰が想像出来ただろうか。 (いや、もしかしたらアイツだけは考えていたかもな・・‥・・) 意味ありげに肩を震わせるクロスを訝しげに見ていた神田は眉を顰めたが、世界で一番美味とされるフランスワイ ンを嚥下していれば、次第にそれはとても些細な事に思えた。 「それで、アンタあそこで何してたんだ?」 「あそこ?」 「難破、なわけ無ェだろ。難破にしても理由があった筈だ」 鋭い視線を向けられ、昔から勘だけは良いなと肩を竦める。 神田を船長へと育てたのはクロスでは無かったが、この勘の良さは黒耀で身に付けたものか潜在的なものか。 どちらにせよ、アイツの目は正しかったと言うより他に無い。 「船を継がせるのなら、船長は神田。航海長はラビにしよう」と酒の席で言っていた時にはその場限りのことだと 思っていたクロスだったが、実際に船長と航海長になった二人は水夫とも案外上手くいっているようだ。 神田などは協調性が極端に乏しかったが、その部分はラビが補ってきたのだろう。 自分たちが船を仕切っていた頃から根の良い水夫が多く揃っていたが、見たことの無い顔も中には居た。 新顔は、きっと神田やラビが上に立つ黒耀に惚れた者。 自然と人間の集まる船は警戒心の強い港にも受け入れられる事が多いので、なかなか良い船を保っているようだと、 クロスは緩く口端を吊り上げた。 「色々あってな。そのうち、気が向いたら喋ってやる」 「アンタの『そのうち』は当てにならない」 「さすが、よく分かってるじゃねぇか・・・・‥それでお前は?」 「は?」 唐突に訊ねられ、「近況を話せとでも言うのか」と間の抜けた声で聞き返す。 にたりと笑うクロスは騒がしいキャビンの方を指差し、捕食者のように目を細めた。 「あの馬鹿弟子、お前の“女”にしたんだろ?」 「・・・・‥人聞きの悪い事言うな」 ムッとした表情の神田は残っていたワインを飲み干し、二杯目を注ぐ。 先程より随分早いペースで嚥下する様に、クロスは「こいつはそんなに器用じゃ無かったな」と昔を思い出して 考えを改めた。 船の頭である船長が、気紛れや遊びで水夫見習いにもならない子供を傍に置くわけが無い。 酒に酔っている水夫の何人かから「船長はアレンを目に余るほど可愛がっている」と聞いたときは半信半疑だっ たが、確かにアレンを想っている事に嘘は無さそうだ。 「十六になったら鍛えるつもりか?」 「・・・・‥アイツが船に乗ってからはまだ他の船から襲われて無い。けど俺たちが戦っている間に誰かが付きっき りってわけにはいかねぇから・・‥・・そのうち」 「『そのうち』、な。マストに登れるくらいは朝飯前にさせろよ?それと剣もだ」 「アイツに人が切れると思ってるのか?」 「自分の身を自分で守れない奴は船にいても足手纏いだ。いくら水夫たちが寛大でも、アレンをあまり特別視す るな。あんな子供に骨抜きにされると威厳が無くなるぞ」 初めは強く、後の方は揶揄するような響きに変わり、神田はこめかみを押さえて項垂れた。 もし他の海賊から襲われた時、真っ先に狙われるのは見るからに鍛えられていないアレンだろうと予想もつく。 クロスの考えは尤もだが、それでもまだ早いと思ってしまうのは、やはり甘さだろうか。 悩む神田を余所に、残り一杯分になったワインを自分のグラスに注いだクロスは不意に立ち上がる。 クロスは舳先まで歩くとグラスを海へと突き出し、ゆっくりと傾けた。 朧月に僅かに照らされる海に、上等の赤が落ちる。 航海の祝福を願うそれは、古くから伝わる海賊たちの習わしだった。 「そういえば・・・・‥アンタも英国の生まれだったな」 「一応はな」 「・・・・‥この間停泊した港が、西の海賊によって襲われた。その中に、『自分たちは北の一族の家臣の末裔だ』と 言っていた奴がいた。家臣の末裔はかつての王の慈悲で南の端に住処を与えられた筈だが、あそこに港は無い。ど うやって海を渡って西に行ったのか・・・・‥」 「―――神田」 低い声に制され、神田はハッとクロスを見上げた。 静かに見下ろしてくる仮面に隠れていない左目は怜悧で、思わず息を呑む。 黒耀の元航海長。彼が何故突然船から姿を消したのかは誰も知らないが、かつてその名を海に馳せた航海士の風格 は少しも損なわれていない。 「国の古い争いに、あまり干渉するな」 「な―――」 「神田・・‥・・ッ!!」 キャビンから抜けてきたのか、場のノリで多少は酒を飲んだらしいアレンが覚束ない足取りで駆け寄ってくる。 すぐ後ろにはラビの姿も見え、神田は『無暗に飲ませるな』と睨んだ。 胸に飛び込んできたアレンを抱き留め、酒の力で普段より甘えてくるアレンの頭をぽんぽんと撫でる。 満足そうにえへへと笑ったアレンは思い出したように神田の背後に居たクロスに目を向け、服のポケットから 何やら金属の重なる音のする袋を取り出した。 「はい、皆さんのお金です」 皆さんの、と強調して師にそれを渡す。 ずっしりと重みのありそうな袋にはおそらく大量の金が入っているようで、神田は調子に乗って―――乗せられ て、と言っても良いだろう―――賭け事に興じた水夫に同情の余地は無いなと内心で小さく呟いた。 「お酒とか、女の人ばかりにお金をかけちゃ駄目ですよ?それだけあるんだから、一ヶ月くらいは長生きして下さい」 憮然と言い放つアレンは小姑のようで、アレンの背後に居たラビが小さく肩を震わせた。 普通の平民なら切り詰めて三ヶ月は生きていけるだろう金額は、クロスにはたった一月しか保たないと言うのだろうか。 「これだけあれば一週間は保つ」 アレンの言葉を訂正したクロスは袋を受け取り、次いでアレンの頭をわしわしと乱しながら撫でた。 まるで動物のように扱われたアレンは頬を膨らませたが、撫でてくる手を払おうとはせず、神田の胸に額を押し付け るだけに留まる。 思わぬ拾い物ではあったが、クロスに会うのはアレンも久し振りだった。 明日にはフランスの港で別れる事になっているので、またしばらくは会えなくなるだろう。 ずっと一緒に居たいわけでも無いが、寂しくないと言えば嘘になる。 養父であったマナからあの娼館に置き去りにされて憂鬱な毎日を送っていたアレンが、初めて心を開いた人間だった。 「殺しても死なないでしょうけど。死なないで下さいね」 神田の胸に顔を埋めながら、師へと向けられた言葉。 その場にいたアレン以外は皆一様に同じような苦笑を浮かべ、神田はしがみついていたアレンの腕の力が弱くなって いるのに気付くと、抱き上げて一足先にキャビンへと戻る事にした。 「おやすみさ〜」と手を振るラビの背後で、クロスはすっと目を細める。 先程神田に言った言葉をもう一度舌の上で転がしながら、視線はまだ幼い弟子を見詰めて。 (いや・・‥・・もう手遅れか) 細い息を吐いたクロスの耳にパサパサと羽音が届き、どこからともなく現れた黄色い小鳥が船の縁にとまる。 小首を傾げてピィッと鳴く様は相変わらずで、クロスは指の腹で小鳥の頭を撫でた。 「久し振りだな。お前とも」 ティムキャンピーはかつての主人の肩へ留まり、大人しく羽根を休める。 以前アドリアの港で少年に渡した小鳥と海の上で再会するとは、さすがのクロスも思っていなかった。 (あの馬鹿弟子がこの船と出会ったのも、お前と俺がここで再会したのも、何かの巡り合わせなのか・・‥‥?) 雲の晴れた空から、月が現れる。 海に捧げた極上の美酒よりも遙かに紅い、血色の月夜だった―――。 ≪前編
遅くなって本当にごめんなさい・・・・・・lllOrz 前回の後書きに「また後日」って書いてるけどお前の後日は四ヶ月も 先なのかよ!!(と、言われない内に自分で言ってみました。えへへ) 因みに次回にクロスの姿はありませんよ。感動のお別れをダラダラと 続けても”らしく無い”気がするので。 やっぱり師匠の感動の別れはトンカチ以上は無いです。無いですとも。 2006/11/20/canon
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