My LOVEr IS brother  09

冷蔵庫の開く音、閉じる音、小さな失敗を犯して短い悲鳴を上げる声。 日常的と言えなくもない朝の光は穏やかで、リビングの扉に背を預けていた神田は軽く頭を振った。 アレンが望むように愛せる自信は、想いを受け止める覚悟をした今ですら無い。 けれどアレン以上に可愛いと思える存在も、護るべき生命も自分には無いと気付いたから・・・。 「アレン」 「すぐに出来るから待っててね?」 張り付いた笑みを浮かべた弟は視界に入れるのも辛く、神田は扉から背を離してアレンの元へと歩む。 他人が見れば普段と変わりない笑みなのか、自分が疚しいと思う気持ちがあるからそんな風に見えてしまうのか。 神田はアレンのすぐ後ろまで歩むと唐突に細い腰に腕を回し、それはまるで恋人にするような仕草で腕の中に収めた。 腕の中で戸惑うアレン以上に、おそらく神田は戸惑っていて。 けれどその戸惑いが悟られれば兄としての威厳が失われるようで癪だった彼は、ゆっくりとアレンの項に唇を押し付けた。 「愛してる」 アレンは昔から神田によく懐いていて、『大好き』という言葉は何度も口にした事があった。 神田はそんな真似決してしなかったが・・・今この時になって、伝えるべき言葉を『大好き』よりも深いモノで表す。 抱き締めて、大切なのだと服を通して伝わる温度で教え込む。 いつの間にか抵抗をやめたアレンの瞳には困惑と・・・涙とが浮かんでいた。 「酷いことばかり言う・・・お兄ちゃんは・・・・・・」 「そうだな。でも嘘じゃない」 遠回りな表現を省き、ただ想いを伝える言葉を吐き出していく。 下手な回り道を、もうアレンにさせたくはなかった。 「彼女、さんは?」 「さっきも訊こうと思ったんだよ。誰の話だ・・・」 「お店にいた女の人が・・・自分はお兄ちゃんの彼女だって・・・・・・」 あの女・・・。 口にはせず脳内で思いっきり罵倒しながら、神田はどうにか荒れる心を宥めてアレンに優しく囁く。 「アイツは関係無い」 「でも・・・ッ」 同じ匂いがした・・・そんな野暮な事を言ったら兄から嫌われるかも知れない。 キュッと唇を引き結ぶところは神田の目線からは見えなかったが、少しだけ強張った身体に気づかない筈は無く。 こんな時だけアレンの感情に聡い兄は抱き締める腕に力を込め、深く溜息を吐いた。 「正直に言えば、俺はお前を恋愛の対象として見る自信がまだ無い」 言葉に、アレンは自分の腰を抱いている腕に自分の手を重ねた。 どう思われようとも、自分の兄を思う気持ちは変わらないから。 何を言われても平気だ、と。 「だが」 引き返せない言葉がある。 その場の雰囲気に流されて口にしてはいけない言葉が在る。 たった二人だけの兄弟は両親が死んでから、大人の顔色を伺う事に少なからず長けていた。 だから知っている。 引き返す事の出来ない言葉を紡ぐ時、それは言った本人に引き返す気が無いのだという事を。 「お前以上に愛せる人間を、俺は知らない」 「お兄・・・ちゃ・・・・・・」 「もっと早く気付いていたら・・・自覚していたら、お前が泣く必要も無かったのにな・・・」 弟が泣くと頭を撫でてくれていた筈の兄の手は、今、優しい手付きでアレンの頬を包んでいる。 いつの間にか反転させられていた身体は神田と正面から向き合う形で、アレンは苦笑混じりの漆黒を見上げた。 近付いてくる端正な顔立ちの兄から吐息を感じた時には、すでに薄い唇が柔らかな唇に重なっていた。 神田にとっては何度目か知らないけれど、アレンにとっては生まれてきて2回目の・・・幸福な口付け。 同じ母親から生まれたとは思えないほど綺麗な作りの顔が目の前にあるというのに、アレンの視界は涙で歪んでいた。 「それだけ泣いて・・・よく枯れねぇな。涙」 「っ、ふ・・・ぅ・・・・・・ッ」 ゴシゴシと力任せに涙を拭おうとするアレンの手を取り、目元に唇を押し付けて滴を舐めとる。 宝石のように光る銀の瞳を見つめた後もう一度触れるだけのキスをし、神田は陽の差し込んでくる窓を見遣った。 亡くなった父と母は、アレンの想いや自分の決意を愚弄するだろうか。 そんな風にふと考えて、一瞬後には「まさか」と自嘲する。 自分たちは両親に愛情を注がれて育った。両親は『お前たちが幸福だと思う道を歩みなさい』とよく言った。 ならば、そうさせてもらう。 世間の目も、否定も、批判も恐れる事は無い。 愛すべき者を愛してはならない法は、この世界の何処にも無いのだから。 「ほら、朝飯作るぞ。コーヒー淹れるからカップ温めろ」 「あっ、お魚焦げてる!!」 「おまっ、和食は作るなってあれ程言っただろうが!!出来もしないクセに余計な事すんな!!!」 「お兄ちゃんが『出来ない事は練習しなくちゃ出来ない』って言ったんじゃないか!」 「だからって俺のいないトコで練習に励むな!」 「いつまでもお兄ちゃんに作ってもらうばっかりじゃ駄目だもん!!」 「お前は一生俺と暮らすんだから良いんだよ!!!!!」 end?  back
兄弟パラ、終了です!! 読んで下さった方、感想を下さった方、ありがとうございました!! 『兄弟愛』、許してもらえて、二人は幸せでした(笑) 大阪へイベントのお姉さま方、道中お気を付け下さいねー!!vvv canon 06 01 08 sun
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