肌を重ねても、どれだけじゃれ合っても、抱き締め合う事は無かったな・・・と、白猫はぼんやり思った。
こめかみに押し付けられた銃口は冷たく、不愉快極まり無い。
けれどそうしている相手は・・・いつしか愛してしまった彼だと解っているから、白猫は抱き締められたまま動かない。
おそらく自分にも染み付いているだろうコロンの香り。
この香りに安堵を覚えたのは、いつの頃か、もう憶えていなかった。

「仕事ですか?」
「・・・・・・あぁ」

銃を握っている右手が、微かに震えている。
声も、微かに・・・・・・。

「それじゃ、仕方無いですね」

元々、白猫と黒猫は殺し合う為に出会った。
それを・・・先延ばしにしていただけ。

白猫は黒猫の背に両腕を回し、自分からもギュッと抱き付く。
温もりを、忘れない為に。

「ねぇ」















死にたくないよ。










一緒に逃げよ?










足手纏いにはならないから。










僕が、護るから。













なんて、そんな事、言えない。
君が組織に飼われている事を知った今は、そんな事を言って君を困らせたくは無い。
だから、僕は微笑んで。






「キス、して下さい」
















そして、白猫は呟く。




















向けられた銃口を避ける術を 僕は知っていたのに
××××× 黒猫も愛してたけれど、組織の命令には逆らえない飼い猫。 canon 05 12 31 sat
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