SULM R-18
襟元を乱され、鎖骨辺りの薄い皮膚を舐められる感触に背が撓る。 立ったまま繰り返される愛撫に少し身を捩れば、噛み付くようなキスに唇を包まれ、抗議の声さえ上げさせてもら えなくなってしまった。 女体化した所為で体力まで落ちているのか、普段ならこの程度は自分からも舌を絡めていられる筈なのに。 アレンは薄く目を開けて、間近にある端正な顔を盗み見る。 すると少し遅れて、神田も誘われるようにアレンを見詰めた。 触れている唇の端が、僅かに吊り上がったのを感じる。多分きっと、体力の無さには気付かれてしまったのだろう。 「んっ・・・・・・は、ぁ」 長いキスから開放され、二人の間に糸をひいた物を、神田が舐め取る。 綺麗な人は何をやっても綺麗だな、などと今更ながらに感心したアレンは、自分も彼の顎に伝うそれを舐め上げた。 そのまま両手を伸ばして先ほどのお返しと言わないばかりに襟元を乱せば、頭上から降ってきたのは押し殺した笑い 声。 訝しげに見上げればそこには楽しそうに自分を見下ろしている神田が居て、アレンはむっと唇を尖らせた。 まるで自分だけがシたがっているようで、面白くない。 「もっと・・・・・・」 壊れて。愛して。 言う前に再び塞がれた唇からは、甘い喘ぎだけが零れた。 「ッ、ユぅ」 白い頬を薄く染めるアレンを眺めていた神田は、その愛らしさに唇を歪めた。 女とするのは初めてじゃないが、相手はアレンだ。 これまで――――新しい記憶でも数年は前だが――――相手にしていた性欲処理(女たち)同様に扱うわけには いかないし、扱おうとももちろん思っていない。 殊更優しく抱いて、焦らして、求めさせて。 それくらいの事は頭の隅に留めてはいたが。 「どこまで堪えられるだろうな」 「え?あ・・・・・・ッ」 上着の裾から忍び込んだ手が、緩い動作で脇腹を撫で上げる。 ひんやりとした指先にアレンは僅かに身じろいだが、逃さぬようにと両足の間に差し込まれた神田の足に阻まれ、 思うようにはいかなかった。 空いた手で項に触れられ、敏感になっているアレンはたったそれだけの事に細かく息を乱す。 素肌に触れていた手の熱が徐々にアレンの温度と同化し始めた頃、神田は啄ばむような口付けを桃色の唇に与え ながら、いつもとは違う作りの団服のボタンを外していった。 「何でッ、こんなに・・・・・・」 「こんなに?」 言葉を繰り返せば、「知っているくせに」と快感に泣き出しそうな銀灰が揺れる。 ボタンを外し終えた団服を床に落とし、同様にシャツのボタンを慣れた手付きで外すと、年相応のふくよかな胸 が外気に晒された。 「ンッ」 上半身に纏う物が下着一枚になった為に、アレンの身体を寒さが襲う。 身震いしたアレンは堪え切れずに神田の胸へとしがみ付き、肩を竦ませた。 神田は抱き着いてきたアレンを一度強く抱き締め、しばらく服越しに温もりを与えてやった後、少女の身である 身体を軽々と抱き上げてベッドへと横たわらせた。 神田が団服を脱ぐ間も、アレンは視線だけで彼を誘う。 一瞬視線が合えば、その瞳は妖艶にではなく、ただ物欲しそうな子供のように細められた。 「女の子の扱い方、ユウは知ってますよね?」 「人並みにな」 「ふぅん・・・・・・」 銀灰の奥で僅かに揺れる焦燥すら愛しいと感じるほど溺れているのに、随分可愛らしいものだと思う。 この手が抱くのも、触れるのも、全て自分だけだと知っていながら。 「嫉妬か?」 「そう見えたのなら、そうなんじゃないですか?」 「言え」 「厭。僕ばっかりこんな想い・・・・・・ユウも偶にはすれば良いのに」 ぽろりと口から零れた言葉に、神田は目を細めた。 アレンはハッと口を片手で覆うが、この距離で神田が自分の声を聞き逃す筈が無い。 そっと盗み見れば、呆れたように弧を描いている唇。 「なら」 言わなくて良い。そんな事、出来はしない。 「誰か別の奴と寝てみるか?」 そんな事、させはしないくせに。 意地の悪い事ばかりを言う。 失言だった事は認めるが、散々焦らしていた上にこれ以上お預けをくらいたいとも思えず、アレンはベッドに手 をついて起き上がった。 ベッドの淵に腰掛けた神田に擦り寄り、自ら唇を重ねる。 だが、何度角度を変えても自分からはキスを仕掛けてこない神田に、アレンは何の含みも無く切なく眉を寄せた。 いい加減泣き出しそうな瞳は、焦らされたが故か、己の態度が原因か。 神田は込み上げる笑いを押し殺すと、どうにか機嫌を取ろうと必死になっているアレンの耳朶に唇を寄せて甘く 噛み、吐息を吹き込むように音を紡いだ。 「お前が俺以外を求めたなら、世界は滅ぶな」 「ユウの世界?」 「お前だろ」 あぁ、それはユウを中心に築き上げられている僕の世界の終わり。 つまり、二人の誓いの終わりを指しているのだろう。 どこまでも意地の悪い恋人の髪を結っている紐を解きながら、アレンはクスリと一つ笑みを溢した。 「誰と寝たとしても、僕はユウのものですよ」 「・・・・・・嬉しくねェ答えだな」 「だから神田が誰と寝ていたとしても、僕のものです。・・・・・・あの日に、全部くれた。僕だけのユウ」 求められるまま唇を重ねれば、アレンは酷く嬉しそうに微笑んだ。 その幸福な笑みにつられ、神田も口元を緩める。 いつもより随分長い白髪に指を滑らせれば、同じように漆黒を梳かれ、また深いキスを交わした。 「ん、ぅ」 背に回された手に、下着のホックを外される。 紐が肩から滑り落ち、アレンは鬱陶しげにそれを脱ぎ捨てると、神田のシャツへと指を伸ばした。 すでに上から三つ目まで外されていたシャツは容易に脱がす事が出来、艶かしい手付きで肩からするりと落とす。 その間暇だったのか、神田はアレンの滑らかな肌に唇を寄せ、いくつもの所有印を刻んでいた。 「アッ」 首筋、鎖骨、そして胸元へと場所を移すときに髪が触れたのか、普段より鋭敏な反応を見せる胸の飾りに、神田 は咽喉の奥で小さく笑った。 アレンの肩を掴んでシーツの上に寝かせ、僅かな刺激でも上気する頬にキスを一つ。 アレンは覆い被さってきた神田の頬を両手で包み、彼の唇に自身のそれを重ねる。 その時不意に、触れた唇が歪んだ気がした。 「ユ、ゥ・・・・・・?」 至近距離にある顔は、やはり薄い唇に弧を描いていた。 「どうしたの?」と訊くよりも早く、唇がもう一度やんわりと塞がれる。 顔が離れて行き、視線を受け止めると、その瞳に悪戯な感情が見て取れてアレンは目を丸くした。 「ユ――――?ッん、ぁンッ」 神田が視界から消えたと思った瞬間、だがすぐに肌を襲った快感に、アレンは背を撓らせて身を捩った。 素肌を、流水のような漆黒の髪が滑る。 ひやりと冷たいそれは敏感な肌に更なる快感を与え、神田は跳ねる肢体を押さえて胸に唇を寄せた。 「アッ!!ユ、ゥ・・・・・・それ、」 「好きだろ?」 「ゃ、でもッ、そ」 そのまま喋らないで。 聞き届けられない願いは、伝える事すら出来ずに喘ぎへと変わる。 アレンの希を受け入れてやろうと思えばそれは実に容易かったが、そうしないのは、先程の発言を理由に少し苛 めてやるのも悪くないなと思ってしまった神田の悪戯心。 いやいやと頭(かぶり)を振る恋人の尖りを時間を掛けて両方とも愛撫し、漸く離してやれば、それは薄く色付 いた肌よりもずっと扇情的な珊瑚色に染まっていた。 「ふ、ぁ・・・・・・ア、」 サラリ、意図せず髪が触れ、アレンの眉根が切なそうに寄せられる。 脱力しているだろう腕を無理に上げる様が愛しくて、神田はアレンの望むようにさせてやった。 けれど特に何をしたかったわけでも無いのか、ただ火照った指先で髪を梳かれる事に目を細めた神田は、その手 を取って指先に唇で触れた。 ぼんやりと見詰めてくる銀灰は滲んだ涙の所為でフィルターがかかり、鮮明な現実を映していない。 「アレン」 「・・・・・・ん」 「止めるか?」 音を正しく拾ったアレンは首を振り、両手を神田の首に回して顔を近付けさせ、唇を奪った。 ぴちゃりと、濡れた音を部屋に響かせる。 「ゃ、く・・・・・・は、やく、シて」 耳元で囁くように懇願をされ、神田はまだ乱れていないアレンの下肢に指を滑らせる。 短い丈のスカートはそのまま、下着だけを脱がせ、すでに濡れている蕾へ指を一本だけ忍ばせた。 「あ、あ、ッなんか、ヤ・・・・・・っ」 「あぁ・・・・・・少し感覚が違うか」 「ん、ぁ、あッ」 「先に一度イけ。その方が辛くない」 普段使う器官もセックスの為に在ると言うわけでは無く、寧ろこの状況の方が正しいのだが、アレンには違和感 があるのだろう。 濡れてはいても神田自身を受け入れるのに十分でないそこを、長い指が丹念に愛撫する。 慣れれば指を増やし、くちゅりと鳴るそこへの挿入を激しくすれば、アレンは甲高い声を上げて神田の指を濡ら した。 「ぁ、はァ・・・・・・んッ」 指を引き抜かれ、唐突に襲われる喪失感に表情を歪める。 神田は息を乱すアレンに優しく触れるだけのキスを落とし、一度顔を上げてサイドテーブルに手を伸ばした・・・・・・ だが、 「・・・・・・」 「ユウ?」 片手で額を押さえた神田を不思議に思い、アレンは力の入りにくい腕を叱咤して起き上がる。 顔の半分を隠して項垂れている恋人の手をやんわりと外せば、黒曜石の瞳は少し脱力したようにアレンを見詰め 返した。 「ここ、お前の部屋だったな」 「え?」 随分使っていなかったが、ここは確かにコムイから「アレン君用」として与えられた部屋だった。 最近は偶に掃除をしに来るくらいで、寝る時は常に神田の部屋だからほとんど使用していないも同然なのだが。 「それが、どうかしたんですか?」 「・・・・・・無ェ」 「あの、ユウ?」 「避妊、しなきゃ拙いだろうが」 深い溜息を吐いた神田に、アレンは戸惑った。 元々の言い争いの種を思い出すと、「着けなくても良いから」などと無責任な発言は出来ない。 自分は一度イっているのにと思うと尚更申し訳なくて、アレンはくしゃりと顔を歪めた。 「口で――――」 「良い」 「ッ、」 短く切られた言葉に、伸ばそうとした指が行き場を失くす。 神田は苦笑交じりに緩く首を振り、宙を彷徨っていたアレンの腕を掴んで抱き寄せた。 冷えた細い身体をすっぽりと腕の中に収め、シーツを引き上げる。 一枚のシーツは二人を包むには足りなかったが、互いの熱が素肌で伝わるので、身震いする程では無かった。 「身体が戻ったら、手加減出来ねェかもな」 「それまで、僕が我慢出来れば良いですけど・・・・・・」 「そうなったら、」 「他の誰か、なんて有り得ませんよ?僕はユウのものなんですから」 アレンは片手を神田の首の後ろへと回し、象牙色の項を撫でながらクスリと妖艶に笑んだ。 この身も、心も、全ては唯一人のもの。 どうしてここまで溺れてしまったのか今更考える事は無いが、極偶に、暇潰し程度に自分に問い掛けてみる事 はあった。 あんなに嫌っていたのに、何故これほど彼を愛したのか。 何故、彼で無ければならなかったのか。 そしていつもその問いの答えは、得られないまま終わる。 もしかしたら、「必要無い」と、心の何所かで思っているのかも知れない。 この手に触れ、目に見え、感じられる存在がすぐ傍に居る事が何よりも重要なのだから・・・・・・と。 項に触れていた手を落とし、左胸に在る梵字に重ねる。 とくん、と規則正しく動く心音に目を細めれば、眉間にキスが一つ落とされた。 「ユウ」 「何だ」 「・・・・・・例え女として生まれていても、君と物凄く仲の悪い仲間だったとしても、結局最後には・・・・・・君を愛 する事を、僕は選んだと思うんです」 「・・・・・・そうか」 「君が僕を選んでくれたかどうかは、僕には分かりませんけどね」 ころころと笑うアレンは、小さくなってしまった身体の所為もあるのか、神田には少しだけ幼く感じられた。 耳を覆い隠す白髪を撫で付け、吐息すら拾えるだろう距離に唇を近付ける。 アレンはことりと首を傾げて黙っていたが、唐突に吹き込まれた言葉に、大きな瞳を零れ落ちそうなほど丸く した。 『“モヤシ”って言う言葉』 なんて懐かしいあだ名。 失礼な呼び名。 『どっかの国の言葉で、“俺の女”って意味らしいぞ』 一瞬後、弾けるように笑い出したアレンを抱き込んで横になり、神田もクツクツと肩を震わせる。 あの頃はただ外見と印象だけで付けたあだ名だったが、今になってそれは意味のある物に思えて。 「偶には良いかもな」 「また呼びます?“モヤシ”って」 「気が向いたらな」 「じゃあ、」 もし本当に、またそう呼ばれたなら・・・・・・アレンです!って言ってあげますよ。 「昔みたいだな」 「えぇ、愛し方も愛され方も知らなかった、あの頃みたいに」 不意に笑いが途切れたけれど、想う所はきっと同じ――――。 二人は意図せず絡んだ視線に引き合わされるよう、どちらからとも無く口吻けた。 Fin.
lllOrz 神田さんの不完全燃焼に拍車を掛けました。 無駄にサディスティックになりました。 いつも通り甘くなりました。 ・・・・・・・・・・。 良いじゃない! うん。そうだ。元からこんなサイトだもの。 最初からこんな予定だったのよ。 書き直したら「空白の8P」になったなんて言えないけれど。 ・・・・・・・・・・。 良いじゃない!! ぐっじょぶ。 って、 誰か言って・・・・・・lllOrz 2006/10/15/sun canon
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