Shall we xxx?



レンズ越しに見る黒曜石は  ただそれだけでいつもと違って見えてしまう
黒のシャツとスラックス  肩で緩く纏められている髪も理由の一つだろうけれど

「それ、インテリっぽいですよ」

目の前でジッと見つめられていたのを綺麗に無視していた神田は  ようやく本から視線を上げた
吐息すら感じるほどの距離で  神田は少女の顔を睨み付ける
何となく  『インテリ』  と呼ばれるのは不快なものだ
癖のように眉間に皺が寄るのを見て  アレンは微笑みながら人差し指で皺を伸ばそうとする
眼鏡をかけているだけで  この皺も愛嬌があるような気がした
厭そうに目を細める事にも構わず触れていると神田は溜息を吐く
しばらくはそのまま好きにさせていたが  あまりにも楽しそうに皺を伸ばすのに苛ついて手を払った

「キスには邪魔かな?」

呟くアレンを呆れたように見つめ  また本に視線を戻す
いつまでも付き合っていると本を読み終える前に新しい任務が入りそうだ
再び目線を下げた神田を  アレンは先程と同じように見つめる
肩で緩く結ばれた髪がパラパラと落ち  神田は鬱陶しそうに掻き上げて耳に掛けた

(どこかで見たな・・・こんなキャラクター・・・・・・)

確か  リナリーから借りた少女漫画にいた
黒髪の長髪で  眼鏡をかけて  通常は周りを毛嫌いしているのに  恋人にだけは優しい青年

それと  もう一つ

「丁寧語が似合いそうですね」
「あ?」

言葉に顔を上げた神田に  あぁ聞いていたんですか?  と悪戯っ子のように笑う
行儀悪くも神田の顔の前  正確には眼鏡を指差して

「眼鏡を掛けていると、丁寧語が似合いそうだなって思ったんです」

そして神田はまた眉を顰め  出来た眉間の皺を  アレンが伸ばす
神田にとっては悪循環  アレンにとっては暇潰し
ここで文句を言えば


『じゃあ遊びましょ?』


と言われるに決まっているので  我慢していたのだが

「ねぇ、神田」

厭な予感がするけれど  その口を塞ぐには間に合わず

「僕と君の言葉遣いを、今日一日だけ入れ替えてみましょう?」

名案だと言わないばかりに  アレンは神田の顔の前に人差し指を突き立てた
神田は読んでいた本に視線を戻そうと試みたが  今度はアレンも引く気は無いらしい
文を追う神田の視界を自分の手で塞ぎ  これは「お願い」では無く決定事項です  と可憐に笑ってみせる

「黙ってろ」
「冗談じゃねェよ」

容姿に似合わぬ言葉遣いに  神田は今度こそ思いっきり眉間に皺を刻んだ

「ぼ……俺は、お前が丁寧語遣うまでやめねェからな」

舌に馴染まない言葉遣いなど始めなければ良いのに
アレンは神田が本を読んでいる間  実はかなり退屈だったようだ
所々つまづきながらも言うアレンに肩を竦め  神田は髪を掻き乱した
無造作に本を脇に放り投げ  アレンに向かって手を差し出す
アレンは不思議そうに首を傾げ  その手を取る
特に警戒を見せないアレンの自分に対する信頼の深さに  神田は苦笑を洩らした
身体が密着するまで抱き寄せると  アレンは前のめりになって神田の胸に顔を埋めるカタチになる





「セックスしませんか、アレン君」





横髪を指で掬われて耳に吐息を吹き込まれ  アレンは悔しそうに唇を噛む
染まった頬に口付けを落とし  神田は愉しそうに口端を上げた















アレンはベッドの中で俯せになり  神田の掛けていた眼鏡を掛けて遊ぶ
何も纏っていない素肌にシーツを着せてやりながら  神田はアレンを腕の中に収めた

「似合います?」

眼鏡を押し上げてフフッと微笑むアレンに  似合わねー  と即答する
でも本当は
レンズの奥で  悪戯な笑みを浮かべる恋人・・・ 普段と変わりない筈なのに  この少女が言うように眼鏡一つで人の印象は変わるものだ 「丁寧語、終わりですか?」
「お前だってやめてんじゃねぇか」
「やっぱり、神田はその言葉遣いが似合いますね」
「お前もな」

クスクスと笑うアレンをベッドに縫いつけ  神田は弧を描く唇にキスを落とす
けれど  その前に





「「コレは邪魔」」















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